- 概要
- アプリケーション
- ユーザーインタビュー
- 論文紹介
製品概要
暗視野分光イメージング顕微鏡InFocus λ DSは、ナノスケールの微小物や微小構造を観察できる暗視野顕微鏡に、試料の散乱光や蛍光などの分光測定をする機能を加えた新しい顕微鏡です。金属ナノ粒子の分布を観察しつつ、その光学応答をスペクトル分析することが可能で、プラズモンバイオセンサーの研究開発などで力を発揮します。
暗視野顕微鏡の光学系を図1に示します。リング絞りと穴あきミラーを用いて、リング状の白色LED照明光を直接観察光学系に入らないように斜めに照明します。観察光に背景光が含まれないため、ナノ構造由来の微弱な散乱光を観察できます。
図1:落射型の暗視野観察光学系。
ライン検出による高速暗視野分光イメージング
暗視野分光イメージング顕微鏡InFocus λ DSの最大の特徴は、高速かつ高画素な暗視野分光イメージングができる点にあります。たとえば、金属ナノ粒子の分布を暗視野顕微鏡で観察しながら、気になる場所を選択して分光イメージングを行うことで、表面プラズモン増強散乱光や表面プラズモン励起増強蛍光などの光学応答をスペクトルとして評価することが可能です。
ライン検出による暗視野分光イメージングの仕組みを図2に示します。暗視野顕微鏡下でハイパースペクトル分光イメージングをするために、分光器のスリット方向を空間情報に使い、指定した測定エリアのX軸の分光測定を一度に行います(ライン検出)。ガルバノスキャナにより検出位置をY軸方向に走査しながら測定を繰り返すことで、指定した範囲の暗視野分光イメージングを高速に実行できます。256 x 1024 画素の電子冷却CCDにより、空間方向においてもスペクトル方向においても、大量のデータを取得できます。
図2:ライン検出の仕組み。測定範囲内のX軸上256点を一度に分光測定します。
図3:ポイント検出とライン検出の測定時間の比較。
直感操作のソフトウェアと粒子解析機能
暗視野顕微鏡画像の気になる箇所をクリックして、その場所のスペクトル情報を確認できます。ポイント、ライン、四角、楕円の4つのROI(Region of Interest)選択モードを選べるため、余分な領域を含めず、ノイズ成分を極力避けたスペクトル表示が可能です。
また、スペクトル内の任意のバンドに擬似カラーを割り当てて、その強度分布を可視化できます。選択したバンドの平均強度分布表示のほか、コベル法によるピーク面積強度の表示などさまざまなモードを搭載しています。
暗視野分光イメージのデータ解析
また、ランダムに飛び散っている微小粒子を閾値かけて検出し、個数をカウントしてナンバリングし、それぞれの粒子の平均スペクトルデータを自動抽出してリスト表示する「粒子解析機能」も搭載。
そのほかにも、ユーザーのデータ解析目的に合わせた専用機能の開発にも柔軟に対応します。
粒子解析機能
アプリケーション
ポリマー被覆銀ナノ粒子によるプラズモン増強散乱光および表面プラズモン励起増強蛍光の分光分析
金属ナノ粒子を用いたプラズモンバイオセンサーの開発において、ナノ構造を観察するための暗視野顕微鏡および光学応答を調べるための分光装置は欠かせません。ここでは、両機能を兼ね備えた暗視野分光顕微鏡を用いて、ポリマー被覆銀ナノ粒子による表面プラズモン増強散乱光や表面プラズモン励起増強蛍光を分光分析した事例をご紹介します。
論文紹介
“Highly Stable Polymer Coating on Silver Nanoparticles for Efficient Plasmonic Enhancement of Fluorescence”
Ryo Kato, Mitsuhiro Uesugi, Yoshie Komatsu, Fusatoshi Okamoto, Takuo Tanaka, Fumihisa Kitawaki, and Taka-aki Yano
ACS Omega 2022, 7, 5, 4286-4292