専用ソフトウェアの開発実績とお客様インタビュー
光計測機器の開発経験と、画像解析やスペクトル解析に関する高度な知識を生かして、
これまでに開発した専用ソフトウェアをご紹介いたします。
開発実績のご紹介ラマン分光/SHGハイブリッド顕微鏡用 制御・解析ソフトウェア
徳島大学 ポストLEDフォトニクス研究所 2017年 開発・納品
レーザー顕微鏡・顕微分光装置向けの統合ソフトウェアMwMapperと、スペクトル画像の表示・解析ソフトウェアInsightをベースに、お客さまが研究室で自作されたラマン分光/SHGハイブリッド顕微鏡の制御・解析ソフトウェアを開発した事例です。
測定系として、ラマン分光用のワンショット分光器と、SHG前方散乱光検出用のイメージング用ポイント検出器を備えています。ラマン励起とSHG励起用のレーザーがそれぞれ用意され、同軸にて対物レンズに入射し、試料の同じ測定ポイントを照射するシステムとなっています。
ハードウェアの知識がないユーザーでも直感的に測定や分析ができるようにするため、本ソフトウェアでは、あらゆる機能をグラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)でコントロールできるよう設計しました。また、イメージング測定中にリアルタイムでスペクトルや画像を表示することができるため、うまくデータが取れていなければすぐに測定を中断して、測定条件を見直すことができます。
お客さまインタビュー「自作のラマン顕微鏡を、誰もが使える“市販品”へと変えてくれるソフトが必要でした」
徳島大学 ポストLEDフォトニクス研究所 南川 丈夫 准教授
徳島大学 ポストLEDフォトニクス研究所
南川 丈夫 准教授
研究室自作のラマン・SHGハイブリッド顕微鏡
サンプルを観察している様子
サイエンスエッジ製制御・解析ソフトウェア
—— まずは南川先生の研究テーマを教えてください。
ラマン顕微鏡の医学への応用、とくに病理学への応用がテーマです。非アルコール性脂肪性肝疾患という疾患があって、普通は放置しても大丈夫なはずの脂肪が線維化や炎症を起こし、肝がんや肝硬変になってしまう病気です。その病理が分かっていなかったり、早期の診断ができていないという課題があります。この疾患では肝臓に脂肪が溜まっていて、かつ特徴的な構造を持っていたりするため、脂肪の分析という視点から病理が分かるのではないかと考えて研究に取り組んでいます。
—— そこでラマン顕微鏡やSHG顕微鏡の出番となるわけですね。
そうですね。脂肪は染色ではその存在が観察できる程度ですが、非アルコール性脂肪性肝疾患ではたとえば脂肪の不飽和度なども病理に影響を与えていると言われており、そうなるとラマン顕微鏡くらいしか分析手段がないわけです。また、脂肪の周囲に線維化が起きるのですが、これも染色だと感度が悪い。そこをSHG顕微鏡で観察しています。これにより、組織学的に早期な状態から発達した状態まで解析できます。
—— 今回、当社の制御・解析ソフトウェアの導入を検討された経緯を教えてください。
本テーマのために顕微鏡を作り始めたのは2016年くらいからです。初めはLabVIEWなどを駆使して顕微鏡を使っていましたが、やっぱりユーザーインターフェースに課題を感じていました。単純な測定であれば良いのですが、たとえば範囲の選択やアライメントをとるとなると簡単にはいきません。なによりも、イメージング分析している最中にスペクトルデータと画像をリアルタイムで確認できないことが大問題でした。測定が全部終了してから初めてデータを確認するのでは、測定条件を吟味するのに致命的に使い勝手が悪いんです。
ラマン顕微鏡の医学的な応用を進めようと思ったら、工学部の人が使えるだけではダメ。医学部の人も使ってみて、「あぁ、こういう風にデータがとれるんだ」と実感してもらう必要があります。しかし当時の装置には、測定を始めるにあたっても手順が細々とあったり煩雑なので、共同研究先の方々に使ってもらうのは難しいと感じていました。
—— 研究室でソフトウェアを作るという選択肢はなかったのでしょうか?
本音としては自分たちで解決できる方が良いので、研究室でソフトウェアを自作する手もなくはなかったです。しかし、現実には年単位という長いスパンで開発に取り組む必要がありますし、その一方でソフトウェア開発は研究テーマにはならないので……ソフトウェア開発はなんとか外注で解決して、その分の時間を本筋の研究に費やす方が良いと考えました。
ちょうどそのくらいのタイミングで予算を確保できて、かつサイエンスエッジが研究室で自作した装置のための制御・解析ソフトウェア開発を手がけているということを知って、あぁそれなら、とすぐに相談することにしました。
お客さまインタビュー「自作のラマン顕微鏡を、誰もが使える“市販品”へと変えてくれるソフトが必要でした」
徳島大学 ポストLEDフォトニクス研究所 南川 丈夫 准教授
実験装置の設置されている徳島大学理工学部機械棟
脂質の偏在を捉えたラマンイメージ
サイエンスエッジ製のNDフィルタ
ソフトウェアのご利用風景
—— サイエンスエッジを選んでいただいた一番の決め手は?
まずそもそもラマン顕微鏡で得られるxyλのデータをどう扱ったら良いかを知っている人は、ソフトウェア開発業者にはほとんどいません。そのような状況で外注するとなると、かなり細かく説明や指示を出す必要があるので、それはあまりに大変だなと。
一方で、サイエンスエッジは顕微鏡もラマン分光も熟知しているプロであることは良く知っていたので、まったく問題なく安心してお願いできると感じました。開発のベースとなる既存ソフトのユーザーインターフェースが極めて直感的に操作できる点も魅力的でした。
要求仕様としては、レーザー走査しながら画像とスペクトルをリアルタイムで確認できることが一番のリクエスト。ほかにも、最終的には医学部の人もパッと使えるようにしたいので、できるだけ光学系をいじらないで済むこと。それこそ対物レンズの変更も手で操作しないで、ソフトウェアですべて制御できるようにしてもらいました。
そのほかにもシンプルな機能でお手頃な値段の電動シャッターや、250階調でレーザー強度を細かく調節できるNDフィルタなどのデバイスも、実はサイエンスエッジ製品を使っています。ユーザーにとってかゆいところに手が届く製品が手に入るのが嬉しいですね。
—— 実際にソフトウェアを導入してみていかがですか?
圧倒的に楽になりましたね。ほぼ市販の装置と変わらないような運用になっています。共同研究先でも、インストラクションをちょこっとやるだけで、問題なく装置の活用が進むようになっています。使い方を聞かれるようなこともほとんどありません。
その後もちょこちょこアップデートしてもらって、いまでは国立循環器病研究センターのイメージングプラットフォームにも同じラマンとSHGのハイブリッド顕微鏡を導入し、そちらにも同じソフトウェアが導入されています。
—— 今後の計画は?
いまの分光器を二次元分光器化してイメージングに応用するだとか、あとは波長をたくさん入れるシステムにするだとか、その辺りも同じようにマウスクリックで簡単に扱えるソフトウェアにしていきたいと考えています。またサイエンスエッジに相談しようと思っています。
あとはプラグインの機能を希望します。ちょっとした機能追加や、本当にマニアックな機能追加に関しては、プラグインとして自分たちで開発して追加できると非常に嬉しいですね。
—— 同じような課題を抱える先生にサイエンスエッジをおすすめするとしたらどのような点でしょうか?
顕微鏡や分光のことをちゃんと分かっているエンジニアがソフトウェアを開発しているため、一から十まで説明しなくてもユーザーに寄り添ったソフトウェアが仕上がるところですね。ちょっとした機能だけどユーザーにとっては大事なポイントをしっかり抑えてくれているので、細部にわたって満足度の高いソフトウェアを仕上げてくれると思います。
(2022年09月)