- 概要
- 主な仕様
- アプリケーション
- 論文紹介
製品概要
InFocus BB-FDTRは、物体表面の光の反射率が温度によって変化する現象(サーモリフレクタンス)を利用して、薄膜や微小構造の熱伝導率などの熱物性値を測定し、その分布を観察する周波数領域サーモリフレクタンス(FDTR)顕微鏡です。ポンプ用CWレーザーによってサンプル表面を最大200MHzの高周波で周期加熱し、温度応答の位相遅れをプローブ用CWレーザーを用いて検出して、サンプルの熱物性値を測定します。
InFocus BB-FDTRは、TDTR法(時間領域サーモリフレクタンス法)と同様に、バルクはもちろん、サブミクロンから数ミクロンオーダーの薄膜や微小物の分析が可能です。測定条件等を選ぶことで、サンプルの深さ方向熱伝導率Kz、面内熱伝導率Kr、界面熱コンダクタンスG、熱容量Cなどのさまざまな熱物性値を測定できます。TDTR法では必須の超短パルスレーザーや遅延ステージは不要です。
(BB-FDTR法についての詳細は「ブロードバンド周波数領域サーモリフレクタンス(BB-FDTR)法のご紹介」をご覧ください)
さらに、オプションで高分解能ラマン分光測定機能を搭載することが可能です。ラマン分光測定により、サンプルの結晶性や残留応力などの情報を得ることで、1台の装置で多角的な材料分析が可能となります。
フォノンの平均自由行程を評価する
InFocus BB-FDTRの最大の特徴は、ヘテロダイン検出により最大200MHzの変調周波数でのブロードバンド周期加熱を実現したところです。ポンプ光の変調周波数を変化させると、サンプル表面からの熱侵入深さdpが変化します(a)。dpがフォノンの平均自由行程(MFP:Mean Free Path)と同程度の長さになると、準バリスティックな熱輸送効果が現れ、dpより短いMFPを持つフォノンのみによる累積熱伝導率kaccumを選択的に測定できます(b)。
この特性を生かして、微細化が進むナノデバイスや熱電変換材料などのナノスケールエンジニアリングにおける準バリスティック領域の熱輸送への理解を深めることができます。
独自のレーザースキャン機能を搭載
サイエンスエッジが得意とするレーザー走査光学系を搭載。ソフトウェアの顕微鏡画像の任意の位置をクリックするだけで、プローブ光の位置を瞬時に変えることが可能です。サンプル表面に対するプローブ光の入射角は垂直に維持されるため、スポット径の歪みを気にする必要はありません。
構成・仕様
選べる装置構成
- ブロードバンド周波数領域サーモリフレクタンス顕微鏡 (InFocus BB-FDTR)
- 周波数領域サーモリフレクタンス顕微鏡 (InFocus FDTR)
仕様
型番 | InFocus BB-FDTR / InFocus FDTR |
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ポンプ光 | 488 nm スポット径: 1 um以下 ~ 5 um(可変) |
プローブ光 | 532 nm スポット径: 1 um以下 |
対応トランスデューサー | Au |
変調周波数領域 | 200 kHz - 200 MHz (InFocus BB-FDTR) 200 kHz - 10 MHz (InFocus FDTR) |
その他 | マッピング測定機能 異方性測定対応(オプション) 高分解能ラマン分光機能(オプション) |
※製品の仕様は予告なく変更する場合がございます。あらかじめご了承の上、詳細は都度ご確認ください。
※掲載の製品外観はコンセプトモデルであり、実際の製品外観とは異なります。あらかじめご了承ください。
アプリケーション
周波数領域サーモリフレクタンス法を用いたアモルファス Ge1-xSnx 薄膜の熱伝導率の測定
Sn 組成の異なるアモルファス Ge1-xSnx 薄膜の熱伝導率を周波数領域サーモリフレクタンス法(FDTR)を用いて測定しました。その結果、アモルファス Ge1-xSnx 薄膜の熱伝導率は Sn組成が6%から 13%へ増加するにつれて 0.50 W/mK から 0.44 W/mK に減少し、最小熱伝導率モデルで計算されるアモルファス限界値とよく合致する傾向を示すことが分かりました。