光計測装置の開発実績とお客様インタビュー

光学設計・機械設計・電気回路・ソフトウェアなど広範な開発力を生かして、
これまでに開発した最先端の光計測装置をご紹介いたします。

開発実績のご紹介暗視野分光イメージング顕微鏡および 制御・解析ソフトウェア

徳島大学 ポストLEDフォトニクス研究所 2022年 開発・納品

  • 暗視野分光イメージング装置

  • 暗視野分光イメージング装置用ソフトウェア

  • 粒子解析機能

  • 暗視野分光イメージング装置
  • 暗視野分光イメージング装置用ソフトウェア
  • 粒子解析機能

暗視野分光イメージング顕微鏡と、その制御・解析ソフトウェアなどを開発した事例です。研究室で所有されていた顕微鏡や分光器、検出機を使って装置を作って欲しいというご要望をいただいたため、それらを組み込む仕様で設計いたしました。

暗視野顕微鏡下でハイパースペクトル分光イメージングをするために、分光器のスリット方向を空間情報に使うことで測定エリアのX軸の測定を一度に行い、ステージをY軸方向に走査しながら測定を繰り返すことで、暗視野分光イメージングを高速に実行できます。基板上に分布するさまざまなサイズの微小構造と、それぞれの分光特性を高速で測定し解析することができる点が特徴です。

また、基板上に散らばった微小粒子を検出、カウントし、それぞれの暗視野分光スペクトルと合わせてリスト化する専用の粒子解析機能も開発いたしました。

お客さまインタビュー「サイエンスエッジの良い所は、光計測の現場の悩みややりたいことがすぐに伝わること」

徳島大学 ポストLEDフォトニクス研究所 矢野 隆章 教授

徳島大学 ポストLEDフォトニクス研究所 矢野 隆章 教授徳島大学 ポストLEDフォトニクス研究所
矢野 隆章 教授


研究室自作の倒立型暗視野分光顕微鏡研究室自作の倒立型暗視野分光顕微鏡

スペクトル画像データ解析の様子スペクトル画像データ解析の様子

サイエンスエッジ製制御・解析ソフトウェアサイエンスエッジ製制御・解析ソフトウェア

—— まずは矢野先生の研究テーマを教えてください。

微細な光学材料を使った高感度なバイオセンシング技術やイメージング技術の開発を行っています。プラズモニクスやメタマテリアルといわれる分野ですね。

微細な構造には光を増幅する機能があるのですが、微細構造の形状やサイズによってどの波長を増強するかという分光特性が変わってきます。光の波長よりも小さなナノスケールの構造体を扱うため暗視野顕微鏡で観察するのですが、通常の暗視野観察では増強される光の色が目で見て分かるだけで、どの波長がどの程度増強されるか定量的な評価ができません。そこで私たちの研究室では暗視野分光顕微鏡を使い、増強される光をスペクトル分析することで、分光特性を評価しています。

また、暗視野分光に加えて、表面増強ラマン分光や表面増強蛍光分光を組み合わせることで、分子構造と分光特性との関係をより詳細に調べようとしています。


—— バイオセンシングへの応用を進めるためのカギは何でしょうか?

たとえばナノパーティクルを使う場合、基板にランダムにばら撒いたときの平均的な情報だけではなくて、一個一個の分光特性がどれくらいばらついているのかを評価することが大切です。それがセンシングの感度に関わってきます。微細加工技術を使って基板上に周期的に微細構造を並べたメタマテリアルにおいても、光学的機能としては並んだ構造全体で持ちますが、我々としては一個一個の光学特性のばらつきを見た上で全体のパフォーマンスを理解したい。このように単一粒子解析まで落とし込んでの評価が、最終的なバイオセンシングへの応用の決め手になると考えています。


—— そうなると、暗視野分光顕微鏡はなくてはならない装置ですね。

そうですね。なにかサンプルを作ったらとりあえず暗視野分光、というくらい必須の装置になっています。


—— サイエンスエッジとの最初の取引はどのような内容だったのでしょうか。

ソフトウェア(システム統合・制御ソフトウェア MwMapper)の導入でした。研究室で自作した暗視野分光顕微鏡での測定を、電動ステージと組み合わせて全自動でできるようにしてもらいました。

それまではIgorとかLabVIEWを使って装置を動かしていましたが、最近は研究室の学生がソフトウェアまで作ることが少なくなってきています。私自身はもちろんできるのですが、そこに時間を割けないので、外注で解決しようと。

ただ、そんな外注先はなかなか見つからないんですよ。「ここならできるかも」と思える会社を何社か探して電話で相談もしたけど話が噛み合わない。その点、サイエンスエッジであれば、分光や光計測のプロフェッショナルなので、基本的な共通認識があり話が早いんですよね。たとえば、暗視野顕微分光に使う白色光といってもいろんな波長があって、波長ごとに強度が違うので補正が必要になる。そんな時もサイエンスエッジはすぐに状況を理解してくれて、必要な機能を加えてくれます。

お客さまインタビュー「2日がかりの測定がわずか3時間に。高性能だけど省スペースな装置開発力にも感嘆。」

徳島大学 ポストLEDフォトニクス研究所 矢野 隆章 教授

ポストLEDフォトニクス研究所エントランスポストLEDフォトニクス研究所エントランス

サイエンスエッジ製 暗視野分光イメージング装置サイエンスエッジ製 暗視野分光イメージング装置

分光器などは矢野先生からの支給品を使用分光器などは矢野先生からの支給品を使用

自作の光学系だとどうしてもスペースが取られる…自作の光学系だとどうしてもスペースが取られる…

矢野先生と暗視野分光イメージング顕微鏡矢野先生と暗視野分光イメージング顕微鏡

—— 実際にソフトウェアを導入されて、実験はどのように変わりましたか?

それまでは1日がかりで測定を行って、さらにそのデータを解析するのに測定時間の1.5倍くらいの時間がかかっていました。データを起こして割り算してっていう作業は、マクロを組んだとしてもそれなりの量があるんですよね。結局、測定開始からトータルで2日半以上かかっていたのが、いまでは3、4時間になりました。ひとつの装置にユーザーの学生が2、3人いる場合、2、3日おきにしかマシンタイムが回って来なかったわけですから、ラボとしての生産性が大きく向上しました。

それから、測定中にリアルタイムでデータを閲覧できることが非常に便利です。「測定の最中にデータを見ろ」とよく学生に言うのですが、一連の実験が終わってからデータを起こしてみて、「あぁ、あのデータ取っておけばよかった」ということがよくあるんです。ほかにも、データを起こして補正をかけてみて、「あれ、このデータ何かおかしくない?」とそこで初めて気づいて、またデータを取り直すこともありました。

これが実験の最中にデータを閲覧できると、「これなら、このバックアップデータを取っておかないとダメだし、こっちも測っておかないと」と次の一手にその場で気づけて、その場で測定できる。これは本当に大きな価値があります。


—— ほかにも解析に特化したソフトウェア開発(スペクトル画像解析ソフトウェアInsight特注機能)もご依頼いただきました。

暗視野分光で単なる強度や波長の変化を見るだけじゃなくて、粒子の個数も評価するというのをやりたかったんです。ランダムに飛び散っている微小粒子を閾値かけて検出して、個数をカウントしてナンバリングして、それぞれの粒子のスペクトルデータと合わせてリスト化するソフトも作ってもらいました。


—— その後、新たな暗視野分光イメージング装置の開発も当社にご依頼いただきました。矢野先生の研究室であれば、自作する選択肢もあったのでは?

もちろん自作もできるのですが、ひとつ私たちではできないことがあって、それはあのコンパクトなサイズに装置をまとめること。我々は装置屋なので、いろいろな装置を開発したいのですが、そうするとその分だけ定盤のスペースを取っていきます。暗視野分光をやりたい、ラマンもやりたい、レーザーももう一本追加したい、となると、どんどん定盤の面積を取ってしまう。

それが、サイエンスエッジにお願いすると、80cm四方のスペースにワンパッケージで収まってしまうのは本当に革新的です。あれを自作したら4倍くらいのスペースを使うことになると思います。もちろん、自作の際はコンパクトにすることを主眼に置いていないという側面もありますが、意識したとしてもあのサイズには収まりません。

これの何が問題かと言うと、大学によってはスペースチャージが取られるんです。最近は研究室単位で取られることもあり、どんどん実験室が縮小されています。そのような状況で装置が占める面積が小さくて済むというのは、本当に助かります。

あとは装置に遮光カバーがついているため、電気をつけて実験できることもありがたいです。隣の光学系を使って測定している人が電気をつけようが消そうが、関係なく実験を進められます。

あともうひとつ嬉しい点は、研究室で所有している顕微鏡や分光器などを使った装置開発に対応してくれるところです。使い慣れた顕微鏡をベースにできますし、コストダウンにもなるので発注者側としてはとても助かりました。


—— 同じような課題を抱える先生にサイエンスエッジをおすすめするとしたらどのような点でしょうか?

どの先生もいろんな仕事を抱えているなかで、ソフトウェアの開発であったり、デバイスの同期や制御系のところに時間を費やしている余裕はないと思います。そんなときに、こちらがやりたいと思っていたことを、詳細を説明しなくても意図をすぐに汲んでくれる点が、サイエンスエッジの一番良いところだと思います。

研究室によって興味がある信号も違うし、検出するタイミングも違う。測定したい物理量とそのタイミングに応じた制御を思った通りに実現してくれるところは、ほかにないんじゃないかと思いますよ。


(2022年10月)